経営の際の思考ツール フェルミ推定
フェルミ推定の名前を聞く人も多いのではないでしょうか。
日本に電柱が何本あるのか?というような、一見簡単に回答を導き出せないような問題に対して、どのような論理的な思考を行うことができるのか?という事を検討する為の思考法です。
実際には、「○○というサービスを始めたいのだけれど、推定の市場規模はどれくらいあるのだろう?」というような問いが立てられた時に利用される思考法になります。
例えば、映画館で食べられるポップコーンの市場規模について推定してみましょう。
フェルミ推定の為の方法は、
簡単な式で表してみる。その式に入手可能なデータや仮定の数値を当てはめるという事を行います。最後にクロスチェックをしてみて、推測の数値に間違いがないかをチェックするという順番をたどります。
まず簡単な式で表してみるです。
これは、「映画館に来場する顧客数×購入割合×ポップコーンの単価」という計算式が成り立ちます。この式に数値を仮説を持って当てはめていきましょう。
映画館に来場する人数は、日本の人口の約40%としましょう。人口数字を調べることが可能です。1億2千万人ですので、4800万人が1年間に映画館に来る計算とします。その人たちが話題作の3作品を年間に見ることとすると、約1億4400万人がポップコーンを購入する潜在顧客となります。
この内、映画館に入ってポップコーンを食べる顧客が6,7人に一人。つまり15%程度だったとします。すると、年間で2160万人が映画館でポップコーンを食べる計算になりますね。ポップコーンは大体500円程度でしょうから、ポップコーンの市場規模は約108億円程度になるかと思われます。
ではクロスチェックしてみましょう。
映画に来る人数をクロスチェックしてみます。日本の歴代興行収入トップ10を平均を出すと、約175億円になります。同じ年にトップ10入りすることはまずなかったので、この歴代トップ10が一つでも出るとすると、映画全体の売上の約10%程度を占めるとします。すると、その年の年間の総映画収入は1750億円程度になります。
チケット代は約1200円程度と仮定すると、来場者数は1億4500万人。当初のポップコーンの潜在顧客数とほぼ同等になります。その為、当初のポップコーンの潜在的市場の数字は108億程度から大きくずれることは無いのではないかと推測できます。
このように、簡単な式に引き直して、その数字に当てはめることができるのかを再検討していく事がフェルミ推定の際に非常に重要な考えかたになります。
このように、答えが簡単に出ない問いに対し、仮に計算式を立て、仮定を置き、近似値を求めていく思考法というのは非常に重要になってきます。
世の中答えのないと井の方が多い中で、少なくとも、ある程度論理的に正しいか検証できる仮説を作りながら思考していく姿勢は非常に重要なのではないでしょうか。
経営を視覚化する思考ツール 散布図②
散布図に関しての留意点ですが、R^2値に留意する事はもちろんの事、基本的なデータをしっかりと取る事も非常に重要であると言えます。
例えば、先ほどの売上と広告の散布図を見てみましょう。
これによると、広告宣伝費と売上の相関関係は0.99以上。ほぼほぼ相関関係にあると言えます。しかし、これは様々な業種を混然一体にして求めている数字です。それで、「ああ、広告をかけさえすればある程度は売上が上がるんだな」と考えて広告宣伝を行ってしまわないように注意が必要です。
例えば、業種を分解してそれぞれの売上と広告宣伝費と売上の相関関係を調べてみましょう。すると、小売業はR^2=0.92と高い相関を示す一方、建設業はR^2=0.22と、相関関係が存在していないという事態になってしまいました。
そう、全体で見た時には強固な相関関係が生じているように見える広告費と売上の関係ですが、実際には業種によって大きくその効果が異なるのです。
全体で見た時にはこのような違いを発見することは不可能になってしまいます。つまり、このような散布図を使う場合には、何よりも「相関関係を分析する為の前提条件が誤っていないか?」に気を付けながら分析を行っていくことが求められますね。
このように全業種の傾向のみで判断をしてしまっては、解像度が低すぎて十分な意思決定の材料にならないこともある事にご注意ください。特にロジックツリーと組み合わせて打ち手の意思決定をする場合、その打ち手は本当に効果があるのか?という判断をする際のデータ収集には気を付けて頂ければと思います。
経営を視覚化する思考ツール 散布図:ロジックツリーと組み合わせると効果的
散布図
散布図は利用されている方も多いのではないでしょうか。散布図とは、2つの変数の関係性を見るためのグラフです。
売上を上げるために戦略を立てるところまではロジックツリーで行うことができますが、実際にその打ち手を行った時に、ある程度効果があるかわかったとしたら、勘に頼らない力強い経営ができると思いませんか。
例えば売上アップにおいても、会社規模と売上、広告と売上、値引きと売上…
一口に売上アップといっても、様々な要素が存在します。
例えば、中小企業庁のデータを利用して売上に関係するデータを調べてみましょう。
若干見づらくて申し訳ありませんが、これは中小企業庁の産業別・従業員の規模別に企業の業績を切り出した表です。
これを参考に見てみると、例えば従業員数と売上は非常にきれいに右肩上がりになっています。これを「相関関係がある」といいます。
エクセルでしたら回帰分析も自動で行ってくれます。R^2=0.9928という数字が出てきていますが、これは「ほぼ正確に連動する」という結果です。R^2=0.6以上で強い相関があると言われるそうですので、従業員数と売上はほぼほぼ相関関係にあると言ってもいいでしょう。
同じ要領で広告宣伝費も見てみましょう。
広告宣伝費と売上の相関関係はR^2=0.9938.従業員数より更に強い相関関係になっています。つまり、広告宣伝費は売上を上げるために必要不可欠のものであると言えます。
別の要素で、売上と税金関係を示す租税公課について見てみましょう。
すると、点が大幅にばらけ、R^2=0.02と、ほぼ相関関係がないことが分かります。
売上が多い企業ほど多くの税金を支払うという関係性にはなっていないことがよく分かりますね。このように、散布図を用いると「何となくこうなのではないか」という意思決定ではなく、データに基づいた意思決定を行うことができます。
ロジックツリーによる戦略立案の後、データを揃えられるのであればその戦略と売上の関係をそろえておきましょう。
ロジックツリー→散布図で売上との相関関係を測定するという方法によって、企業の限られたリソースを効果的な打ち手に集中する事ができるようになります。
ロジックツリーから戦略を立案する方法については
経営を視覚化する思考ツール ロジックツリー③留意点
財後にロジックツリーの留意点です
①もれなくダブりなくはほどほどに
ロジックツリーの根幹をなす「もれなくダブりなく」ですが、細分化しようとすれば、優秀な方ほど細かく分解できてしまうでしょう。
しかし、実際には小項目以降になるともれなくダブりなくを厳密に行いすぎると費用対効果の面でマイナスが生じやすいようです。
もれなくダブりなくもほどほどにすることを意識しましょう。
②感度のいい切り口を理解する
例えば、売上の分解を行う際にも、切り分け方は様々です。例えば、店舗運営が5,6店舗程度であれば、既存店①既存店②・・・と売上を分解する事も可能です。
しかし、それだけではどこの売上が減少しているかわかるだけで、具体的に対策を打つ事を産み出すことはできないでしょう。傾向が見えて、実際に対策が打ちやすい切り口を意識する感度のいい切り口を意識する事を心掛けたいものですね。
経営を視覚化する思考ツール ロジックツリー②戦略立案までに落とし込む
ロジックツリー2
ロジックツリーのいい所は、この要素に対してオプション案を検討し、実際に効果的な作戦を採用するところまで掘り下げることができる点にあるのではないでしょうか。
例えば、前回の記事のロジックツリー。「来店者数が減少しているから何とかしたい!」と考えたとします。
この時のオプション案とは、つまり解決のための具体案です。新規顧客と既存顧客に分けてみると、新規顧客の場合にはどのように認知してもらい、足を運んでくれるかが重要になるでしょう。既存顧客の場合にはリピートしてもらえるかが重要になりません。結果として、これだけ具体案を出せたとします。
新規顧客に認知してもらう為に、「SNSを始める」「広告を打つ」「チラシを配る」「路面に看板を設置する」既存顧客のリピート率を増やすために「お得感を出すためにポイントカードや割引の回数券を発行する」「お客様の性質を知るためにアンケートやヒアリングを行う」などの方法が出ました。
この辺りはブレストで多くのオプション案を出すことが望ましいでしょう。
では、多くのオプションを出した結果、どれを採用するかを絞り込みます。その為に自社の状況と、お客様の状況を洗い出してみました。すると、実際にはお客様の状況を掴み切れておらず、広告費にはあまりコストを掛けられず、あまり大々的にすべてを試すという方法は採用できないことが明らかになります。
この状況になるとある程度採用されるべき戦略が明らかになりますね。まずは自社の顧客がどのようなニーズを持っているのかを掴むことが最重要になります。その為、お客様の性質を知る為のアンケートやヒアリングを重点的に行い、それに沿った内容をインスタなどで試験的に投下し、反応を確認してみるという方法を取ります。
実際にお金をかけるのは、ある程度お客様のニーズをつかんでからの方がよいでしょう。結果、この3点を採用する事となりました。
ある程度お客様の理解することができれば、広く拡散する広告などを採用することで大きな効果を期待する事も可能になります。
このように、ロジックツリーは分析によって売上の原因を発見するだけでなく、ブレストをすることにより打ち手を検討し、自社とお客様の状況に照らすことによって今の企業の状況に最適な手法を選択する事が可能になります。
ただ分析の手法に留めておくのはもったいないですよね。自社の経営に活かせる分析を心掛けたいものですね。
経営を視覚化する思考ツール ロジックツリー
ロジックツリー
ロジックツリーは分析の一手法で、もれなくダブりなくを意識して、全体の概念から下位の概念に枝分かれさせていく考え方です。
このように、どんどん枝分かれさせていく事によって、問題がどこにあるのか、何故その問題が起こっているのか、問題の解決策などを分析していく手法ですね。
このロジックツリー自体は問題の特定を行う時、更に財務面においては財務モデルを作成するときにも機能しますね。普段から良く使う分析手法かなと。
例えば財務で「利益がゴール」だとすると、利益は「売上-費用」なので、このように分解できます。ただ、これだけだと解像度が低いのでもう少し細かく分解していきます。
例えば、店舗で経営する企業の場合、既存店の売上と、新規店の売上に分けることができます。
この要領でどんどん細かく分解していきます。今回はザックリですが、ここまで分解してみます。
この分解を終えると、財務的には「なぜ売上が上がったのか?なぜ落ちたのか?」という原因を掴める要素を見つけ出せます。
今回の場合で言うと、この黒く塗りつぶした部分。この数字が上下し、結果として売上が変わってくるのです。
財務面の支援をしていると、「売上が上がりましたね、下がりましたね」という、数字の結果だけ見て報告だけをする方もいらっしゃいますが、それはあまり意味はないと思います。このように解像度を高く分解することによって、初めて「じゃあどうするか?」という効果的な一手を見つけ出す下地が整うのです。
これは費用の面でも同じこと。「一律○○%のコストカット」というような事をせずに、そのコストは経営のどの部分を負担するのか?という事を意識して初めて、しっかりと経営の意思決定に使える要素になり得ます。